灯油ってどんなもの?
ご家庭のストーブやヒーターといった暖房器具に使用される『灯油』ですが、実際にはどのようなものであるか詳しく理解されている方は多くはないでしょう。
一言で表してしまうと「燃料」というものになるわけですが、他の燃料とことなり何が違うかなどもあまりイメージがわかないかもしれません。
そこで今回は灯油について詳しく掘り下げて考えて行きたいと思います。
灯油の用途は?
まず、灯油が使われる用途については大きく分けて3つに分類されます。
- 【家庭での用途】暖房器具(石油ストーブ・石油ファンヒーター)、給湯器(灯油ボイラー)
- 【農業・漁業での用途】暖房設備(灯油燃焼機)、小型船舶・漁船のエンジンの燃料
- 【工業・事業での用途】乾燥機・ボイラー・草焼き
実際に様々な用途で用いられている状況となりますが、やはり家庭用の暖房器具の燃料として使用される印象が強いものと言えるでしょう。
価格はどのくらい?
暖房器具の燃料として使用される灯油は、レギュラーガソリンの半額程度の価格で販売されています。以下は、年代ごとの価格の一覧となっています。
| 各自治体 | 1リットルあたりの灯油の価格 |
| 2000年 | 約 59.8 円 |
| 2010年 | 約 77〜79円 |
| 2020年 | 約 86〜89円 |
暖房器具を3~4時間ほど使用した際に、灯油1リットルが消費されるものと計算すると、冬場の1日当たりの消費量は2リットル程度と考えることができます。つまり1ヶ月間使用を続けると、60リットル程度の量が必要となり、毎月5,500円程度の費用が掛かります。
ピンポイントに部屋を暖める目的で一時的な使用を想定したとしても、30リットル(15日分)程度の購入は考えられ、2,500円程度の費用が掛かってくるものと考えられるでしょう。
他の燃料と何が違う?
燃料にも様々な種類があり、灯油もその中の1つです。特に関連性がある物として「石油系燃料」が該当してきます。
- 【ガソリン】自動車・発電機用
- 【灯油】石油ストーブ・ボイラー・暖房機器
- 【軽油】トラック・バス・窯業機器・建設機器
- 【重油】船舶・工場用ボイラー・発電所
上記のようにいくつかの種類に別れてきますが、何故このような種類に別れているのかを理解するのは簡単なことではないでしょう。しかし、同じ石油系燃料といっても他用することは難しいということは頭に入れておきましょう。
これらの石油系燃料は原油から作られるものとなりますが、精製を行う過程で蒸留温度ごとに取り分けることが可能となっており、異なるものとして作られるものとなってきます。
つまり、蒸留がしやすいものは比較的使いやすい燃料であるものの持続力があまりなく、蒸留がし難いものは使いづらい面があるが持続力やエネルギー密度が高いと言えます。
| 燃料 | 蒸留温度 | 燃えやすさ | 特性 | 使用対象 |
| ガソリン | 約 30~180℃ | 火がつきやすい | 気化しやすい 瞬発力がある | ガソリンエンジン |
| 灯油 | 約 150~250℃ | ゆっくり燃える | 気化しにくい 燃焼が安定する | 石油ストーブ・ボイラー |
| 軽油 | 約 180~360℃ | ゆっくり燃える | 気化しにくい ガソリンよりも価格が安い エネルギー密度が高い | ディーゼルエンジン |
| 重油 | 約 350℃以上 | 加熱しないと霧状にならない | 非常に気化しにくい 安価で大量に使える 高温を維持できる | 船舶や工場の大型ボイラー |
また、引火点と発火点をみると分かる通り、灯油は家庭用の暖房器具との相性が非常に良いものとなっています。
ガソリンは常温の時点すでに危険なものとなっていますが、それ以外の燃料は常温下では引火しにくいため、溢してしまっても大きな危険はありません。灯油に関しては、発火する温度も低いため火を起こしやすい燃料となっています。
| 燃料 | 引火点 | 発火点 |
| ガソリン | 約 −40℃ | 約 300〜450℃ |
| 灯油 | 約 40〜60℃ | 約 200〜250℃ |
| 軽油 | 約 50〜70℃ | 約 250〜350℃ |
| 重油 | 約 60〜150℃ | 約 300〜400℃ |
危険性や注意点は?
石油系燃料は、特性や臭いなどの観点からも扱いに注意が必要なものとなり、人体・環境面への影響が大きいものとなっています。そのため、注意して使用する必要があります。
独特の臭いと揮発性
| 燃料 | 揮発性 | 芳香成分 | 臭い | 臭いの強さ |
| ガソリン | 非常に高い 少量でもすぐ空気中に広がる | ベンゼン・トルエン シンナーのような強くて甘い刺激臭 | 最も臭いが強い | ★★★★★ |
| 灯油 | 揮発性は中程度 広がり方は遅い | パラフィン系 やや油っぽい臭い | 一般的な石油臭 | ★★★★☆ |
| 軽油 | 揮発性は中程度 | 添加剤や硫黄分の 鼻に残る臭い | 一般的な石油臭より 生臭く重い香り | ★★★☆☆ |
| 重油 | 粘度が高く揮発しにくい | 硫黄分などが多い 重い焦げ臭 | 一般的な石油臭より 重くて汚い臭い | ★★☆☆☆(常温) ★★★★★(加熱時) |
灯油はガソリンに比べ揮発性が低く、刺激も弱いため、家庭で扱う燃料として比較的安全です。しかし、灯油が蒸発して空気中に広がると、その臭いを吸い込むことで人体に影響が出ることがあります。少量の臭いを吸った場合は、頭痛や軽いめまい、喉や鼻の刺激といった軽度の症状が現れることがあります。換気をすれば多くの場合すぐに改善します。
一方、強い臭いの環境に長時間いると、吐き気、強い頭痛、喉の炎症、だるさといった症状が出ることがあり、灯油が皮膚に付くと乾燥や炎症を起こすこともあります。ガソリンほど急性中毒の危険は高くありませんが、換気の悪い場所で大量の蒸気を吸い込むと健康影響が強まる可能性があります。
そのため、給油や保管はできるだけ換気の良い場所で行い、こぼした場合は速やかに拭き取ることが大切です。家庭レベルの使用で適切な換気を行っていれば、深刻な健康リスクは低いとされています。
溢してしまっても問題ない?
灯油を少量こぼしてしまった場合、すぐに拭き取り適切な換気を行えば深刻な危険につながることは少ない。しかし、放置すると健康面・建物への影響・火災リスク・環境負荷・臭いの残留など、さまざまな問題が起こりうるため、注意が必要です。。
まず健康面では、灯油はガソリンほど揮発性が高くないものの、蒸発した成分を吸い込むことで頭痛、喉の痛み、吐き気などが起こることがある。密閉空間で大量にこぼして放置すると、気化した成分が充満し、より強い刺激症状が出ることもあります。皮膚についた場合も乾燥や炎症を起こすことがあるため、必ず換気を行い付着したらすぐに洗い流すことが望ましいでしょう。
建物への影響としては、床材に灯油が浸み込むと変色・腐食・膨れなどの劣化が起こる可能性がある。特にフローリングや畳は吸収しやすく、放置するとニオイが長期間残る原因にもなります。また、家具や電化製品にこぼした場合は、材質を傷めたり故障の原因になることがあるため、拭き取りと乾燥を確実に行う必要があるでしょう。
下水や河川に流した場合の環境面への影響は?
灯油を下水や河川に流すことは重大な環境汚染につながるため絶対に行ってはいけません。例え少量であったとしても「生態系へのダメージ」「下水処理機能の低下」「法律違反」につながるため、こぼした灯油は必ず拭き取って可燃ごみとして廃棄する必要があります。
灯油は水に溶けずに水面に薄い油膜をつくり、これが酸素の供給を妨げることで水中の生物が呼吸困難になり、植物プランクトンの光合成も阻害されます。その結果、魚や微生物の死滅、餌生物の減少など、生態系全体のバランスが崩れる原因になります。また、灯油に含まれる有害成分は魚や稚魚のエラに付着して呼吸障害を引き起こし、特に繁殖期の卵や幼生に深刻な影響を与えます。
また、灯油の一部は底質に吸着して長期間残留するため、自然の浄化機能が低下し、生態系の回復には数か月から数年を要する場合があります。家庭から排水として流れた灯油は下水処理場にも悪影響を及ぼし、微生物が死滅して浄化能力が低下したり、油分の蓄積によって機械トラブルが発生することもあります。
このように、環境汚染、水生生物への被害、処理施設への障害など、多方面に深刻な影響をもたらすため法律でも禁止されています。法律では、状況に応じて3ヶ月以下~1年以下の懲役、または30万~100万円以下の罰金が科されます。
専用の容器で保管しなければならない理由は?
灯油は可燃性の高い石油製品であり、誤った容器で保管すると漏れや破損、揮発、さらには引火事故につながる危険があるため、灯油は専用に設計された容器での保管が必要とされています。灯油専用容器は、灯油によって劣化しにくい材質で作られており、一般的なプラスチック容器のように溶けたり脆くなったりする心配がないものです。また密閉性が高く、揮発成分や臭気が漏れ出すのを防ぎ、転倒時の漏洩リスクも低減できる構造となっています。
さらに、灯油は静電気や火花で引火する可能性があるため、専用容器は静電気が溜まりにくい素材や構造が採用されている特徴があります。容器そのものの強度も高く、満タン時に約18kgにもなる灯油を運搬しても破損しにくいように設計されているます。また、赤色の容器が使われることが多いのは、高い視認性を確保し、水や飲料用容器との誤認を防ぐためです。
このほか、灯油は消防法において危険物に指定されており、容器の材質・強度・容量・表示方法などについて明確な基準が定められ、これらの要件を満たした容器で保管することによって、漏洩・火災・環境汚染などの事故を防ぎ、安全性を確保することができるものとなっています。したがって、灯油を専用容器で保管することは、事故の予防、法令遵守、そして日常生活の安全を守るために不可欠でとても重要なものです。
まとめ
今回は「灯油」について解説を致しましたが、いかがでしたでしょうか?
灯油は、ガソリンや軽油と同じ石油から作られる中間留分の燃料であり、家庭用暖房器具をはじめ、農業用ヒーター、給湯器など幅広い用途で利用されています。引火点が比較的高く、ガソリンより安全性が高い一方で、揮発や漏洩、取り扱い方法を誤ると火災につながる危険性を伴うため、適切な保管と管理が欠かせないものです。保管には灯油専用の容器を使用することが求められ、これは灯油によって容器が劣化したり、静電気の発生による引火リスクを避けたりするためであり、消防法でもその規格が定められています。
灯油の臭いは特有で、皮膚や粘膜への刺激を与えることがあり、多量の蒸気を吸い込むと頭痛やめまいを引き起こすリスクもあります。また、灯油をこぼした場合、素材に染み込みやすく、臭いが残りやすいだけでなく、火気のある環境では危険性が増すため、早急かつ適切な処理が必要となります。さらに、灯油を排水口や河川に流すことは重大な環境汚染を引き起こし、水生生物の生息環境を破壊するだけでなく、下水処理施設の障害や油膜による自然浄化能力の低下を招く恐れがあります。そのため法律でも禁止されており、量や状況によっては刑罰の対象となる可能性があります。
総じて、灯油は生活を支える便利で有用な燃料である一方、扱い方を誤ると火災、健康被害、環境汚染などさまざまなリスクを生むものです。安全な保管方法、こぼした際の適切な処理、環境への配慮を理解し、正しい取り扱いを理解し徹底することが、安全かつ安心して利用するために必要です。
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